特集 DOHaDと周産期医療
DOHaDと周産期医療:DOHaDと新生児の長期的合併症
心血管リスク
有馬 勇一郎
1
ARIMA Yuichiro
1
1熊本大学国際先端医学研究機構
pp.1549-1552
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001792
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はじめに:周産期の環境変化とその生涯にわたる影響
ヒトを含むほとんどの胎生動物は胎盤と子宮をもち,胎児を外敵から守り成長のための安定した環境を提供する。しかし,出産前後で周囲の温度や酸素濃度が大きく変化するため,胎児は生理的な条件下でも劇的に変化する環境への適応を迫られる。さらに,周産期においては母体の状態が直接胎児に影響を与えるため,胎児期の段階でも適応が生じる。周産期ストレスに対する適応反応の結果,成人期の心血管疾患リスクの上昇が生じるという問題がdevelopmental origins of health and disease(DOHaD)の基本概念である(図)。英国の疫学者David Barker(1938〜2013)は,画期的な観察とその後の疫学データに基づき「節約表現型仮説」を提唱した。この概念は,胚発生期の栄養不足と成人期の心血管疾患リスク上昇との関連性を示したものである。多くの疫学的およびゲノムワイド解析もこの概念を支持し,周産期環境がその後の生活における非感染性疾患(non-communicable disease:NCD)への感受性に影響を与えることを示した。そのため現在では,Barkerの仮説は拡大して適応され,DOHaDとして認識されている。
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