血管機能の代謝調節

Metabolic regulation of vascular function

　本稿では，広範囲な代謝のなかから，糖代謝，脂肪酸異化，そしてケトン体代謝との関連に焦点を当てる．内皮細胞は古くから解糖系に依存することが知られているが，酸素濃度にも耐性を持ち，血管新生や疾患において重要な役割を果たす．また，脂肪酸代謝はエネルギー基質としての寄与は少ないものの，機能を維持するうえでは重要な働きを持ち，近年，ケトン体代謝についても血管新生との作用が明らかとなってきている．ペリサイトや平滑筋細胞の代謝については未解明な点が多いが，内皮細胞との相互作用や，病態形成過程における表現型の変化と代謝型の変化の連関が注目されている．細胞間での代謝物質の相互移動は単なるエネルギーのやり取りだけにとどまらず，細胞の機能や振る舞いに影響を与え，微小環境における血管生物学の理解を深めるうえで重要な知見である．