特集 周産期(産科)の手術の工夫―筆者はこうしている
癒着胎盤がある場合の手術
前置癒着胎盤の手術
松永 茂剛
1
MATSUNAGA Shigetaka
1
1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
pp.1141-1145
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001688
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はじめに
癒着胎盤は本来脱落膜上の繁生絨毛が増生し,基底膜より胎盤側に存在するNitabuch’s layerとよばれる線維性の層を形成することによって絨毛の筋層内への侵入を防いでいるが,欠損もしくは低形成により脱落膜をこえて子宮壁に異常に付着もしくは筋層内に浸潤する状態を指す1)。その侵入の度合いによって重症度が分類され,子宮筋層に胎盤絨毛が接している癒着胎盤(placenta accrete),筋層内に侵入している侵入胎盤(placenta increta),子宮漿膜をこえて筋層を穿通している穿通胎盤(placenta percreta)に分類される。前置胎盤や既往帝王切開などがリスク因子として知られており2,3),近年帝王切開率の増加に伴いその発症リスクは上昇している。1回の帝王切開の既往で11%,2回の帝王切開の既往で40%,3回の帝王切開の既往で60%の発症リスクがあるといわれている4)。広範な胎盤の癒着を認める場合は帝王切開時に大量の出血をきたし,母体死亡の原因となるリスクの高い産科合併症の一つである。
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