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はじめに
妊婦のサイトメガロウイルス(CMV)感染は胎児に移行し,母子感染により出生児は先天性CMV感染症を発症し,中枢神経系などに重篤な後遺症をきたしうる(表1)1)。筆者らは,2008年から多施設共同臨床研究を行い,先天性CMV感染は300人に1人発生していること,予想される先天性CMV感染の発生数に比べて実際診断されている症例はきわめて少ない現状を明らかにしてきた。2013年からは生後3週間以内の新生児CMV感染児の核酸検査技術の開発を行い,2018年1月に保険収載され,標準的診療として新生児尿を用いた確定診断法が確立した。同時に,観察研究で症候性先天性CMV感染児に対する抗ウイルス薬のバルガンシクロビル(VGCV)経口治療の臨床効果と副作用を報告し,わが国でのエビデンスを蓄積した。そして,症候性先天性CMV感染症を対象としたVGCV経口治療の第Ⅲ相多施設共同非盲検単群医師主導治験を2020年から実施した。この治験成績に基づいて2023年3月27日に症候性先天性CMV感染症に対するVGCV剤「バリキサ®ドライシロップ」の適応承認を取得した(製造販売業者:田辺三菱製薬)。また,Mindsに準拠した診療ガイドラインを作成し,研究班のホームページを刷新し,本疾患に関する情報提供および検査法や治療法の適正使用の普及に努めている。2019年からは,将来の先天性CMV感染児の早期発見のための新生児尿マススクリーニングへの展開も見据え,ろ紙尿採取キットの開発を行い,2021年から社会実装を行うことに成功した。2024年現在,年間2万人の新生児がこのCMV尿スクリーニング検査を受けるにまで普及している1)(図1)2)。このCMV新生児尿スクリーニング検査は,株式会社シノテストサイエンス・ラボで受託検査が可能である(https://www.ssl-inc.co.jp/cmvtop.html)。
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