増刊号 周産期診療のための病態生理
[新生児編]
感染
先天性CMV感染症の感染時期により症状が異なるのはどのような機序なのか
森内 昌子
1
,
森内 浩幸
1
MORIUCHI Masako
1
,
MORIUCHI Hiroyuki
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学
キーワード:
サイトメガロウイルス
,
胎内感染
,
催奇形因子
,
臨界期
Keyword:
サイトメガロウイルス
,
胎内感染
,
催奇形因子
,
臨界期
pp.466-470
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001344
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先天性CMV感染症の基本病因,発症機序,解剖学的背景
1 臨界期における侵襲
1個の受精卵(0.00003g)が約2兆個の細胞からなる新生児(約3kg)になるまでの胎生期は,細胞数が激増し,さまざまな役割をもつ細胞へと分化し,多種多様の細胞が集まって器官・臓器が形成される劇的な38週間である。この複雑で緻密な過程が何らかの理由で乱されると,児に恒久的かつ重度の障害が起こりうる。その感受性が高い臨界期は,器官・臓器ごとに異なるが,胎生早期に集中している(図1)1)。したがって,この時期の催奇形因子(放射線,タバコ,アルコール,ある種の薬剤,TORCH病原体など)の影響は大きい。TORCHは胎内感染によって児にさまざまな障害を与える病原体の頭文字を示し,サイトメガロウイルス(CMV)はそのCに当たる。多彩な病原体(単細胞原虫,スピロヘータ,RNAウイルス,DNAウイルスなど)がよく似た臨床像を呈するのは,胎児に及ぼす病態生理に共通点が多いためである。
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