増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血感染症
CMV
中村 良子
1
1昭和大学藤が丘病院臨床病理科
pp.309-313
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903168
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はじめに
サイトメガロウイルス(cytomegarovirus;CMV)は,βヒトヘルペスウイルス科のDNAウイルスで,先天的および後天的に種々の感染症を起こす.CMVは他のヘルペスウイルス科のウイルスと同様に,初感染後体内に潜伏感染(latent infection)し,宿主の免疫(特に細胞性免疫)が低下すると再活性化(reactivation)する1〜3).
日本人の大多数は出生時の産道感染(垂直感染),生後の経母感染あるいは水平感染によりCMVの初感染を受ける.わが国成人のCMV抗体陽生率は80〜90%と高く,供血者(ドナー)のほとんどがCMVを体内に持っているため,輸血などの医療行為は,内因性CMVの再活性化,再感染または初感染の危険(リスク)を伴う.したがって,臓器移植後などの易感染性宿主(immunocompromised host),未感染妊婦,未感染妊婦からの低体重出生児(未熟児)への輸血は,抗CMV抗体陰性血または白血球除去フィルター処理の血液製剤を用いるべきである.
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