増刊号 周産期診療のための病態生理
[新生児編]
呼吸器系
なぜ同じ在胎週数でもRDSを発症する場合としない場合があるのか
長 和俊
1
CHO Kazutoshi
1
1JCHO北海道病院小児科
キーワード:
呼吸窮迫症候群
,
肺サーファクタント
,
サーファクタント補充療法
,
Ⅱ型肺胞上皮細胞
,
気管支肺異形成
Keyword:
呼吸窮迫症候群
,
肺サーファクタント
,
サーファクタント補充療法
,
Ⅱ型肺胞上皮細胞
,
気管支肺異形成
pp.385-388
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001323
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RDSの基本的病態
1 基本病因,発症機序,解剖学的背景
呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)の基本的病態について解説する。胎児肺は形態的発育と機能的成熟により出生に伴う肺呼吸開始の準備を進めている1)。胎児肺の機能的成熟の中心は肺サーファクタントの分泌開始であり,生理的状態では妊娠34週頃からⅡ型肺胞上皮細胞が成熟して肺サーファクタントの分泌を開始する。肺呼吸開始により肺胞に空気が侵入すると,肺胞の内面をおおう薄い水の膜である肺胞被覆層と肺胞気の間に気液界面が発生する(図1)。気液界面には面積を小さくする方向に働く表面張力が発生する。表面張力の合力は,肺胞腔を相対的陰圧にする。Ⅱ型肺胞上皮細胞からラメラ体として分泌された肺サーファクタントは,気液界面に吸着して表面活性を発揮する。表面活性は,面積を大きくする方向に働き,肺胞腔を相対的陽圧にする。
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