特集 周産期医療のヒヤリ・ハット―医療事故・医療紛争を防ぐために 産科編
各論
GBS感染症
小山 尚子
1
,
佐藤 昌司
1
KOYAMA Naoko
1
,
SATOH Shoji
1
1大分県立病院産婦人科
pp.905-907
発行日 2023年6月10日
Published Date 2023/6/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000966
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はじめに
B群溶血性レンサ球菌(group B StreptococcusまたはStreptococcus agalactiae:GBS)は,妊産婦の腟,外陰,腸管(肛門部)の常在菌で,わが国では妊婦の約10~20%の頻度で保菌しているとされ1),母子感染によって新生児に重篤な感染症をひき起こす可能性がある。妊娠中のGBSの保菌状態は一時的,間欠的,持続的といったさまざまなパターンをとることが知られている2)。GBSは腸管内常在菌であり,妊娠中に除菌しても,再度陽転化することがある3)。新生児におけるGBS感染は無症候性から敗血症にまで多岐にわたり,特に新生児敗血症は予後不良である。本症は,大きく早発型と遅発型に分けられる。生後7日未満の発症は早発型と定義され,呼吸窮迫,無呼吸発作,低血圧などの敗血症の重篤な症状が通常生後6~12時間に出現する。死亡率は4.5%,後遺症率は11.3%と報告4,5)され,特に早産児に多い。遅発型感染症は生後1週間~3か月に通常髄膜炎として発症するが,肺炎や蜂窩織炎,化膿性関節炎を生じ,死亡率は4.4%,後遺症率は17.2%と報告されている4,5)。早発型や遅発型感染の生存児には神経学的後遺症が少なくない2)。
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