今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[感染症] B群連鎖球菌(GBS)
松田 静治
1
1江東病院産婦人科
pp.597-599
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100285
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1 診療の概要
B群連鎖球菌(GBS)はStreptococcus agalactiaeとも呼ばれるグラム陽性球菌で,Lancefieldが細胞壁に存在する群特異的多糖体により群別分類したことより生まれた.現在,血清学的に10種(Ia, Ib, II, III, ほか)に型別されているが,抗体価は一部の血清型にしか測定できない.本菌は腟の常在菌の1つで産褥熱患者からも分離されるが,その頻度は低い.そのほか尿,咽頭からも検出される.また,腟培養陽性者のパートナーの尿道から同じ血清型のものが検出されるため,一部STD的な側面を有している1, 2).
2 妊婦におけるGBS検出率と児への感染様式
本菌は健常なヒトの腸管にも存在し,会陰部を介して腟内に定着しており,妊婦の10~20%から検出され,発症率は低いが産道感染により新生児GBS感染症を引き起こす.GBS保菌妊婦から出生した児の30~60%に主として体表よりGBSが分離されるが,これは産道による表在性汚染というべきもので,必ずしも感染を意味するものではない.実際に新生児GBS感染症を発症する児は保菌妊婦の1%程度とされ,本邦での発症頻度は全分娩の0.1%以下(約2,000例に1例)である.GBSの感染様式は,図1に示すような分類から,母体からの経産道感染(垂直感染)と出生後の水平感染の二様式がある.産道感染は妊婦の保菌しているGBSが上行性に,あるいは産道通過中に児に感染するものである.
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