- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日々発展をみせる現代の生殖診療において,妊娠が成立しても約15%が流産に至っており,流産率を改善することが大きな課題である。初期流産のうち約60~80%は児の染色体異常に起因するものであり1),治療可能な原因ではない。臨床現場においては患者に「仕方がなかった」や「確率の問題である」と声をかける場面がしばしばある。一方で流産や死産をくり返し生児を得られない病態である不育症においては,原因不明または偶発的要因によるものが64.3%に存在し2),患者に大きな精神的負担を与えている。不育症の原因検索は,医学的治療のための意義のみならず患者の心理的にも非常に重要である。妊娠初期の自然流産の原因の大半を占める胎児染色体異常の有無は流産時の絨毛染色体検査により診断することができる。絨毛染色体検査は従来自費診療または国の不育症診療に対する助成金によるサポートのもとに行われてきたが,2022年4月より認定施設において保険適用で検査を行うことが可能となった。本検査は清潔操作で絨毛組織検体を採取することが必須であるため,検査を予定する症例では待機的管理や電動式吸引法(electric vacuum aspiration:EVA法)を行うことは望ましくない。そのため名古屋市立大学病院(当院)においては機械的子宮内容除去術(dilatation & curettage:D & C法)を施行してきたが,近年はほぼすべての症例に対して手動真空吸引法(manual vacuum aspiration:MVA法)で流産手術を行っている。子宮内膜への負担軽減などさまざまな点においてメリットが多いと考えられているMVA法を紹介する。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.