今月の主題 内科医がよく遭遇する血管疾患
大動脈疾患
大動脈解離
雨宮 邦子
1
1東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器内科
pp.855-858
発行日 1998年5月10日
Published Date 1998/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906801
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ポイント
●近年,増加しつつある血管疾患のなかでも予後不良と考えられている大動脈解離は高血圧,先天性結合織疾患(Marfan症候群)などに合併して起こることが多い.
●特徴的な臨床症状は激しい胸・背部痛であるが,心不全,四肢の虚血症状,脳卒中様症状を呈する例もある.
●本疾患が疑われた場合は,血圧(四肢の左右差),心雑音の有無,胸部X線写真,心電図などをチェックする.
●確定診断への検査として,超音波,CT,さらには血管造影検査と段階的に施行する.これらの検査で解離の有無,偽腔閉塞の有無,解離範囲,合併症の有無を的確に診断し,治療方針を迅速に決定することが,救命への第一歩である.
●偽腔開存型のStanford A型は外科治療が原則であり,B型では急性期合併症を有する例,切迫破裂例,瘤径が5cm以上の例を除き,降圧療法主体の内科治療を行う.
●慢性期の治療は,解離腔が残存している例ではその部位の拡大を防ぐため降圧療法を継続し,定期的にCT検査などを行い,瘤径の拡大がないかなど慎重に経過観察する.
●Marfan症候群では,病型にかかわらず経過とともに瘤径の拡大してくる例が多く,早期手術が望ましい.
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