増刊号 191の疑問に答える周産期の栄養
母体の栄養
3.病態栄養と食事
7)妊娠貧血
牧野 真太郎
1
Makino Shintaro
1
1順天堂大学浦安病院産婦人科
キーワード:
産後
,
貧血
,
周産期予後
Keyword:
産後
,
貧血
,
周産期予後
pp.310-312
発行日 2022年11月18日
Published Date 2022/11/18
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000534
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妊婦中の貧血の定義
妊娠に伴う生理的な血液希釈により,妊婦ではヘモグロビン(Hb)値およびヘマトクリット(Ht)値が非妊娠時と比較して低下する。こうした生理的な変化は血液の粘性を低下させて血栓塞栓症発生に対して防御的な因子となる一方で,過度の貧血は母児の周産期予後の悪化につながる可能性がある。日本産科婦人科学会は,妊娠女性にみられる貧血を妊婦性貧血とし,その中で小球性低色素性で,血清鉄低下や総鉄結合能(TIBC)上昇など鉄欠乏が確認されるものは妊娠性鉄欠乏性貧血と定義している1)。世界保健機関(WHO)の基準では,妊婦の貧血をHb値 11.0 g/dL未満,Ht値33.0%未満と定義している。妊娠期間によって基準が異なり,妊娠初期と末期では,貧血を診断するためのHbの閾値は11.0 g/dLであり,妊娠中期では10.5 g/dLである。生理的血液希釈のため,成人女性の貧血基準(Hb値 12.0 g/dL未満,Ht値 36.0%未満)より低く定義されている2)。
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