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第32回腎と妊娠研究会 【ワークショップ】
妊婦のタンパク尿から母児の予後を考える―妊娠高血圧腎症の「蛋白尿の多寡」は周産期予後に影響を及ぼす
Proteinuria in Pregnant Women and Prognosis of Pregnant Children The amount of proteinuria in pregnancy-induced hypertensive nephropathy affects the perinatal prognosis
森川 守
1
MORIKAWA Mamoru
1
1関西医科大学医学部産科学・婦人科学講座/総合周産期母子医療センター
キーワード:
蛋白尿
,
妊娠高血圧腎症
,
周産期予後
,
蛋白/クレアチニン比
Keyword:
蛋白尿
,
妊娠高血圧腎症
,
周産期予後
,
蛋白/クレアチニン比
pp.691-695
発行日 2023年11月25日
Published Date 2023/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000966
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はじめに
2017年に妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)の診断基準が変更となり,妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)の診断基準は,「高血圧+蛋白尿」のみから,「高血圧+蛋白尿あるいは高血圧+母体臓器障害あるいは高血圧+胎児胎盤機能不全のどれか」となった。北海道大学で2011~2017年(全分娩2,674例,多胎を含む)に旧診断基準でHDPと診断された181例の内訳は,PEが91例(50.3%),妊娠高血圧が69例(38.1%)であった。新基準ではPEが107例(59.1%),妊娠高血圧が53例(29.3%)とPEの割合が上昇した1)。すなわち,新基準でのPEの85.0%が蛋白尿を有していた。関西医科大学附属病院で2017~2021年(全分娩3,802例,単胎のみ)に旧診断基準でHDPと診断された346例の内訳は,PEが107例(30.9%),妊娠高血圧が184例(53.1%)で,前者は胎児発育不全合併14例(13.1%)を,後者は胎児発育不全合併15例(8.2%)を含んでいた。新基準ではPEが122例(35.3%),妊娠高血圧が169例(48.9%)とPEの割合が上昇した。すなわち,新基準でのPEの87.7%が蛋白尿を有していた。このようにPEにおいて診断基準が改訂されても,高血圧+蛋白尿(一部に+母体臓器障害あるいは胎児胎盤機能不全)でPEと診断される症例の割合が非常に多い。しかし,PEにおいて「蛋白尿は周産期予後にあまり影響しない」として,軽んじられる傾向にある。それは本当に妥当であろうか。
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