特集 周産期と最先端サイエンス
産科領域
最新医療 子宮移植の臨床応用の現状
木須 伊織
1
,
阪埜 浩司
1
KISU Iori
1
,
BANNO Kouji
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.967-973
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000238
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はじめに
世界保健機関(WHO)は,不妊症は1年以上の期間,避妊をしていないのに妊娠にいたらない「病気」として定義づけている1)。不妊症の原因には,男性因子,卵管・腹膜因子,排卵因子,子宮因子,頸管因子などが挙げられるが,子宮自体の異常が原因である子宮性不妊症に対する治療に対してはこれまで解決策がないのが現状であった。これらの女性が児を得るには代理懐胎や養子制度などの選択肢が残されるが,代理懐胎に関しては多くの倫理的・社会的・法学的問題点を抱えていることにより,わが国では日本産科婦人科学会の会告より認められておらず,諸外国においても同様な状況である国が多い。このような背景のなか,近年,子宮性不妊女性の妊娠出産のための選択肢として,「子宮移植」という新たな生殖補助医療技術が考えられるようになった。海外ではすでに臨床研究がなされ,2014年9月にはスウェーデンにおいて,世界で初めて生体間子宮移植後の出産が報告された2)。この報告を機に国際的に子宮移植が新たな医療技術として急速に展開され,わが国での実施も期待されている。本稿では,これまでに公開されている国際論文発表,学会発表,研究者間におけるpersonal communicationなどの情報をもとに,海外の子宮移植の臨床応用の現状について概説する。
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