Japanese
English
特集 腎臓とエイジング/アンチエイジング
各論
腎臓の老化のメカニズム
腎臓DNA損傷が全身老化を駆動する―免疫・代謝老化との関連
Kidney DNA damage drives systemic aging―links to immune and metabolic aging
中道 蘭
1
,
林 香
1
NAKAMICHI Ran
1
,
HAYASHI Kaori
1
1慶應義塾大学医学部内科学教室腎臓内分泌代謝科
キーワード:
ポドサイト
,
近位尿細管
,
DNA損傷
,
代謝変容
,
免疫老化
Keyword:
ポドサイト
,
近位尿細管
,
DNA損傷
,
代謝変容
,
免疫老化
pp.817-821
発行日 2025年6月25日
Published Date 2025/6/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001926
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
日本では高齢化の進行に伴い,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の患者数が増加しており,現在約1,300万人が罹患している。CKDには根本的な治療法が存在せず,病状が進行して末期腎不全に至ると,透析や腎移植といった腎代替療法が必要となり,医療経済に大きな影響を及ぼす。末期腎不全の患者数は今後も増加が予測されており,CKDの進行を抑える治療法の開発が喫緊の課題である。近年,機械学習を用いた研究により,CKDが他臓器の老化を促進する独立した因子であることが示され,そのメカニズムの解明が注目されている1)。個体老化や加齢性疾患の発症・進展には,老化細胞の蓄積が重要な役割を果たすことが明らかになってきた。細胞老化のメカニズムにおいてDNA損傷とそれに対する修復応答はきわめて重要な因子であり,加齢に伴うDNA損傷の蓄積がさまざまな疾患の進展に寄与することが示唆されている。一方で,DNA損傷修復応答には組織や細胞種ごとの特異性があり,DNA損傷による加齢性疾患の発症・進展を制御するためには,各細胞の修復応答の多様性を理解することが不可欠である。筆者らは,腎臓を構成するポドサイトと近位尿細管細胞が,それぞれ異なる免疫応答を引き起こし,異なる老化表現型を示すことを報告している。本稿では,これらの最新の研究成果をもとに,ポドサイトと近位尿細管細胞におけるDNA損傷と老化の関係について議論し,今後の研究の展望を述べる。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.