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特集 尿細管と腎線維化
【線維化を誘導する尿細管障害】
尿細管DNA損傷応答と腎線維化の関係
Relationship between tubular DNA damage response and kidney fibrosis
岸 誠司
1
KISHI Seiji
1
1川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学
キーワード:
SASP
,
DNA損傷
,
AKI to CKD transition
,
ATR
Keyword:
SASP
,
DNA損傷
,
AKI to CKD transition
,
ATR
pp.862-867
発行日 2022年12月25日
Published Date 2022/12/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000550
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はじめに
急性腎障害(AKI)も慢性腎臓病(CKD)も世界的に増加している。しかし,障害腎の修復を直接促進したり,線維化の進展を抑制する治療薬がないのが現状である。臨床的にはAKIの病態は多岐にわたるが,ミクロでみると,急性障害の病態とその転帰は,障害因子が作用する部位,障害を受ける時間の長さ,関与する細胞の種類と細胞内環境などに依存する1)。AKIでは,近位尿細管上皮細胞(PTECs)の損傷,尿細管閉塞,内皮の活性化,血管損傷,白血球の動員を伴う炎症反応などにより腎実質が障害される2)。本来であれば,修復機構が働き,腎臓は損傷前に近い状態に修復される。PTECsは,腎皮質尿細管間質の大部分を占める細胞であると同時に障害に対して感受性が高いため,AKIの主たる標的となる3)。障害に感受性が高い一方でPTECsが再生能を有することは以前から知られていたが,加齢や腎障害の既往があると,この再生・修復が不完全に終わり4),最初の障害に対する持続的な反応が遷延したり,継続的な障害に対する感受性が亢進した状態が持続することがわかってきた3)。この状態はCKDを発症させて末期腎不全を引き起こす。
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