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はじめに
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では,比較的早期から貧血を伴う患者も存在し,病期の進行に伴いその発現頻度は増加し,重症度も進行する。これらCKDに伴う貧血を適切に是正することは,残腎機能の維持,日常生活動作(ADL)・生活の質(QOL)の維持や改善,心血管合併症の発症・進展の予防,生命予後の改善につながる可能性があり,CKDを管理するためには非常に重要である。CKDに伴う貧血の主な原因は,狭義の腎性貧血つまり,腎臓において,ヘモグロビン(Hb)の低下に見合った十分量の造血ホルモンであるエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)が産生されないことにより引き起こされる貧血と考えられている。近位尿細管周囲間質に存在するEPO産生細胞は,腎機能障害に伴う腎血流量の減少や尿細管間質障害により,EPO産生刺激が不十分となる。よって何らかの原因で貧血状態となっても,CKD患者は貧血を改善させる十分なEPOが産生されず,貧血状態が維持もしくは進行する。実際,健常者は貧血状態になると血中EPO濃度が上昇するのに対して,保存期CKD患者や血液透析(HD)患者は同程度の貧血状態にあるにもかかわらず血中EPO濃度が上昇していないことが報告されている1)。CKDに伴う貧血の原因が単純にEPOや鉄の欠乏のみであれば,赤血球造血刺激因子製剤(ESA)や鉄剤の補充で解決する。一方で,高用量のESAや鉄剤の投与を受けても目標Hb値の維持が困難なCKD患者も多く存在する。さらに,わが国のHD患者を対象とした観察研究では,目標Hb値が維持できない患者群のみならず,高用量のESAや鉄剤の投与を受けている患者群は,心血管系合併症などの有害事象や入院のリスクが高いことが報告されている2)。これらの結果は,CKDに伴う貧血の原因が多岐にわたっている可能性を示唆するものである。よって,CKDに伴う貧血の原因を単純にEPOや鉄の欠乏と決めつけ,貧血改善のためにESAや鉄剤を過量に投与することは望ましくなく,貧血に介入する際,もしくは貧血治療薬の反応性が低下した際には,ほかの貧血に至る原因の検索が必要となる。本稿では,EPO産生障害以外のCKDに伴う貧血の原因やその対策について述べたい。
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