Japanese
English
特集 補体と腎疾患:温故知新
補体系の基本的な理解のために
補体学の歴史―レクチン経路の発見も含めて
History of complementology―Including the discovery of the lectin complement pathway
町田 豪
1
,
関根 英治
1
,
藤田 禎三
1
MACHIDA Takeshi
1
,
SEKINE Hideharu
1
,
FUJITA Teizo
1
1福島県立医科大学医学部免疫学講座
キーワード:
補体学の歴史
,
補体活性化経路
,
補体制御因子
,
レクチン経路
,
MASP
Keyword:
補体学の歴史
,
補体活性化経路
,
補体制御因子
,
レクチン経路
,
MASP
pp.11-15
発行日 2024年7月25日
Published Date 2024/7/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001384
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はじめに
補体は,19世紀終盤に発見された免疫機構であり,感染防御やアポトーシス細胞などの不要成分のクリアランスを担い,生体恒常性の維持に機能する。補体系は,異物の認識分子,セリンプロテアーゼ,結合分子,制御因子,補体受容体など,30種類以上の血清蛋白質および膜蛋白質によるカスケード反応によって上述の役割を担う。細菌やウイルスなどの病原微生物が宿主体内に侵入すると,補体活性化経路(古典経路,レクチン経路,第二経路)が始動し,結合分子であるC3の限定分解により小分子のC3aと大分子のC3bを生じる。C3bの一部は病原微生物表面に共有結合して,「異物であるという目印」になる。異物表面に結合したC3bは,C5~C9から成る補体後期経路の活性化の起点となり,C5の限定分解を促進する。そして異物表面にC5b-9複合体〔膜侵襲複合体:membrane-attack complex(MAC)〕が形成され,溶菌を起こす。また,C3とC5の限定分解により生じた小分子C3a,C5aはアナフィラトキシンとして作用し,貪食細胞を動員して炎症反応を惹起する。本稿では,現代において判明しているこれらの補体系の応答について,補体の発見から各経路の活性化の分子メカニズムの解明まで,補体研究の歴史について概説する。
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