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はじめに:診療の概要
1 概要
以前より,心不全と腎臓疾患が高率に合併することが知られており,2008年にRoncoらにより心腎連関症候群(cardio-renal syndrome:CRS)という概念が提唱された1)。CRSは1型から5型まで分類され,特にCRS1型は急性心不全を原因とする急性腎障害(acute kidney injury:AKI),CRS2型は慢性心不全を原因とする慢性腎不全であり,臨床の現場でも心不全に腎機能障害の合併を経験する機会は非常に多い。また,心不全患者は糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の低下に依存して予後不良になるといわれており,心不全に合併する腎障害への治療介入は重要である2, 3)。これまで心不全患者の腎機能低下は腎前性AKIが主体と考えられていた。具体的には心不全に伴い,心拍出量が低下することで腎低灌流が引き起こされ腎虚血が起きるといった機序である。一方で,心拍出量の低下はレニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin-aldosterone system:RAS)の活性化に伴うナトリウム(Na)貯留により体液量の過剰を引き起こす。実際に臨床の現場でも起坐呼吸や全身性浮腫を認める症例も多い。そういったなかで2009年にMullensやDammanらは,心不全時の腎機能低下が心拍出量に依存せずに中心静脈圧(central venous pressure:CVP)の上昇によって影響を受けていることを報告した4, 5)。また,Mullensらは,急性心不全患者145例を対象に右心カテーテル検査を行い,CVP上昇が心係数(cardiac index:CI)よりも腎機能障害と相関し,腎うっ血が心不全の予後不良因子であると報告した。さらに,Dammanらは,2,557例の患者に右心カテーテル検査を行い,推算糸球体濾過率(estimated glomerular filtration rate:eGFR)を測定したところ,CVPが高値であるほどeGFRが低下すると報告した。以上の結果から,心不全に伴うAKIの発症機序として腎虚血と腎うっ血の両者の病態が考えられるようになった。
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