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1 病因・病態
感染症を契機に発症する糸球体腎炎としては,溶連菌感染後急性糸球体腎炎(post-streptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)が古くから知られた感染関連糸球体腎炎(infection-related glomerulonephritis:IRGN)の代表疾患である。PSAGNの典型例は溶連菌感染の後,一定の潜伏期を経て急性腎炎症候群を呈して発症し,腎炎発症時にはすでに感染が治癒していることが多い。これに対し,近年,糖尿病,悪性腫瘍やアルコール依存などの基礎疾患を有する患者に増加している,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)や他のブドウ球菌感染に関連して発症するIRGNは,ブドウ球菌関連糸球体腎炎(staphylococcus infection-associated glomerulonephritis:SAGN)ともよばれ,腎炎発症時に感染が継続していることが多い。腎生検の蛍光抗体法でC3の他にIgAの強い沈着を伴うのが特徴である1)。同様の腎炎は他菌種でも報告され,より広くIgA優位沈着性IRGN(IgA-dominant IRGN:IgA-IRGN)と総称されるようになった2, 3)。感染症が治癒せずに継続中であるものを “狭義” のIRGNとよび,腎炎発症時に感染症がすでに治癒している感染後糸球体腎炎(postinfectious glomerulonephritis:PIGN)を含めて “広義” のIRGNと総称する4)。PIGNの代表がPSAGNであり,IRGN(狭義)の代表がIgA-IRGNである。IgA-IRGNとSAGNは類似した疾患と考えられるが,IgA-IRGNは蛍光抗体法で糸球体にIgAおよびC3染色が強く陽性で黄色ブドウ球菌以外の感染でも起こり得るのに対し,SAGNでは25%程度にIgA染色が弱いか認めない症例があり,ブドウ球菌感染が必須であることが挙げられている1)。本稿では,PIGNの代表疾患であるPSAGNとIRGNの代表のIgA-IRGNを中心に述べる。
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