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はじめに
短期間に腎機能が可逆的不可逆的に低下していく過程で,血清クレアチニン値を1つの指標として数日の経過でクレアチニンクリアランスおよび糸球体濾過量が10mL/min未満となると想定される場合に急性腎障害(acute kidney injury:AKI)に対する腎代替療法が必要となる。そのトレンドをKDIGO分類により早期よりリスクとして捉えやすい(表)1)。さらに図12)でみるとそれがよくわかる。図では腎機能が90%低下した場合の血清クレアチニン値の推移をシミュレーションしている。経時的に血清クレアチニン値が上昇することがわかり,約1週間で血清クレアチニン値は6.8mg/dLになる。読者の皆さんが腎代替療法開始を決定するのは,どの時点だろうか? ここで重要なのは,前提条件として述べたとおり,腎機能はすでに当初よりほぼゼロであることである。このように,ゴールドスタンダードとして治療判断に用いている血清クレアチニン値は遅れて上昇するため,治療が後追いになることがわかるだろう。腎臓は水や電解質のバランス,小分子のみならずサイトカインをはじめとした比較的サイズの大きい分子量のクリアランスも担当している。そのため,例えば水バランスが大きくプラスになってしまう場合には血清クレアチニン値の変化で読み取ることはできないが,腎臓の薬物への反応が早々に期待できないと考えられると腎代替療法を開始することとなる。また,敗血症のようにクレアチニン産生速度が減じることが知られている病態もあり,急性の肝不全や膵炎にAKIが合併していることもある。つまり,腎代替療法を考えるときに血清クレアチニン値による場合と,よらない場合の2つのアプローチをはじめとしてクリニカルシナリオによる判断がある。次に急性血液浄化では,AKIの病因への直接的なアプローチを行う場合がある。つまり,自己免疫疾患や血液疾患などに伴う病的な免疫グロブリンに対する治療やグラム陰性桿菌などによる敗血症性ショックに対する治療がこれに該当している。このようにAKIに対する急性血液浄化療法には,腎代替療法としての持続療法と間欠療法のみならず,アフェレシス療法や免疫吸着療法も入るため簡単に触れることとする。
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