Japanese
English
特集 腎臓の自動制御機構
【序文】
腎臓の自動制御機構とその破綻
Renal autoregulation and its disruption
西山 成
1
NISHIYAMA Akira
1
1香川大学医学部 薬理学
キーワード:
腎自動制御機構
,
進化
,
尿細管糸球体フィードバック
,
体液制御
,
生体恒常性制御
Keyword:
腎自動制御機構
,
進化
,
尿細管糸球体フィードバック
,
体液制御
,
生体恒常性制御
pp.671-673
発行日 2022年11月25日
Published Date 2022/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000362
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脊椎動物の進化の過程において発生した腎臓は,全身のホメオスタシス,すなわち恒常性を維持するために,尿を作って身体の外に排出して体液の状態を一定に保つ。一見,腎臓の形は種によって全く異なるが,発生過程と内部構造には一定の共通性があり,基本的に糸球体と尿細管から構成される1)。このうち,われわれ哺乳類の腎臓は,長い進化の歴史の過程を経て,非常に複雑な構造と高い能力を獲得した。脊椎動物が上陸する際には,身体の表面が大気に触れて水を失って脱水になる危険性に直面したため,身体は水分や熱を遮蔽するような皮膚で覆われるようになった2)。しかし,例えばわれわれヒトの皮膚からは1日あたり約0.6Lの水が不感蒸泄し,場合によっては汗が数L以上も出る(筆者も若い頃にはサウナ1時間で体重を1kg以上減らせたこともあった)。また,呼気からは1日当たり0.3Lほどの水が体外に出され,腸管からの水分の喪失も下痢の時には10Lに達することさえある。このように,大量の汗をかいたり,下痢をしたりする時には,腎臓は尿の産生を瞬時に少なくして体液を保持する必要がある。一方で,ビールなどを大量に飲んだ場合には,すぐに余分な水分を尿として速やかに体外に出す必要がある。このように,われわれの腎臓は体液の変化に対してリアルタイムに敏感に反応し,常に体液を一定に保つ高い能力を有しているのである。
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