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1.ミネラル代謝異常と老化
Chronic kidney disease-mineral and bone disorder(CKD-MBD)は,慢性腎臓病に伴うカルシウム(Ca)やリン(P)などのミネラルと,副甲状腺ホルモン(PTH)や線維芽細胞増殖因子23(FGF23),活性型ビタミンDなどのそれらを調節するホルモンの異常により,骨代謝異常と血管石灰化が誘発され,骨折や心臓血管病の発症や死亡のリスクが高くなる疾患群である。一方,皮膚や性腺の萎縮,肺気腫など老化のフェノタイプを示すklothoマウス1)は,血清Ca,P濃度が高く,骨粗鬆症や血管石灰化を認め,短命であるが,P制限食などPを低下させる治療により,血管石灰化を含めた老化のフェノタイプや生命予後が改善することが報告されている2)。つまり,過剰なP負荷により老化が進展する可能性を示唆している。ヒトでも,小児であるにもかかわらず老化のフェノタイプを示す,Hutchinson-Gilford progeria症候群という疾患がある。この疾患の老化の原因は,遺伝子異常によりprelamin Aをlamin Aに分解する酵素が失活し,prelamin Aが蓄積することにあると報告されている。また,血管平滑筋細胞(VSMC)にCa,Pを負荷するとprelamin Aが蓄積し,prelamin Aを過剰発現させたVSMCにCa,Pを負荷すると骨芽細胞様形質変化および石灰化が進展することが報告された3)。このように,Ca,Pの負荷は細胞を老化させ,老化したVSMCへのCa,Pの負荷は石灰化を進展させるため,Ca,Pの負荷により細胞老化と石灰化の悪循環が形成されるものと考えられる。Prelamin Aをlamin Aに分解する酵素は,遺伝子変異のほか,細胞老化,酸化ストレス,炎症などでも抑制されることが報告されている4)。
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