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特集 消化器内視鏡寸言集2025
Ⅶ.病理
病理診断に適・不適な検体を知ろう
Tissue specimens suitable/unsuitable for pathological diagnosis
下田 将之
1
Masayuki Shimoda
1
1東京慈恵会医科大学病理学講座・病院病理部
pp.630-631
発行日 2025年4月25日
Published Date 2025/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000002053
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解説
病理診断は,消化管病変の治療方針決定において重要な役割を果たしている。もちろんすべての症例において正確な病理診断を確定することが理想的であるが,実際にはさまざまな要素によりその質的診断や深達度・断端評価が困難な症例が少なからずあることを認識しておくことも重要である。病理診断の難しい症例として,病変が十分に採取されているものの診断自体が難しい場合(希少な症例のため専門家による診断を要する場合,炎症が強く反応性か腫瘍性かの鑑別が難しい場合など),標本上病変がわずかしかない場合(量が少ないため,本当に病変かどうかの判断ができない),挫滅が強い場合や標本作製上のアーティファクトが加わった場合(正確な形態の評価ができない),病変部位が採取されていない場合(粘膜下腫瘍など)などがあげられる。また,腫瘍性病変と判断可能な際にも,特に低分化な腫瘍の際には,細胞の由来を同定することができず,「悪性腫瘍」という診断にとどまることもしばしばある。臨床医はこのような病理診断の限界を理解するとともに,病理診断に適した検体とはどのような検体かを知っておくことが重要と考えられる。本稿では,病理診断を困難にする要因を解説するとともに,おもに消化管病変の生検や内視鏡的切除検体において病理診断において理想とされる検体とはどのような検体であるかについて解説したい。
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