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疾患の概要
十二指腸腔内憩室 (intraluminal duodenal diverticulum:IDD)は十二指腸内腔に突出する囊状の膜様構造を呈する憩室で,稀な先天性奇形である1)。IDDは胎生期より遺残した不完全十二指腸隔膜が腸蠕動や食物などの圧力により肛門側に進展され囊状に変化したとされる不完全十二指腸隔膜説や,胎生期において十二指腸に発生する重複腸管と同様の機序で発生するとされる重複説などがある。発症年齢は20歳以上がほとんどであり,先天的な要因に後天的な要因が加わることでIDDが形成されると推察される。また,報告例の多くで病理学的に筋層の欠如が認められることから,不完全十二指腸隔膜説が有力とされている2)。IDDは上腹部痛・嘔気嘔吐・腹部膨満感を主訴に発見されることが多く,先天性,後天性の合併症を有することが報告されている。先天性の合併症率は19%で,輪状膵・腸回転異常・異所性膵などの頻度が高い。後天性の合併症率は54%で,胃・十二指腸潰瘍の頻度が高く (22%),急性膵炎の合併例は14%である3)。IDDによる後天的合併症で保存的治療が困難である例は治療対象となる。第一選択は憩室切除で,以前より外科的憩室切除が行われてきたが,本邦では1979年のHajiroら4)の報告以来,内視鏡的切除例の報告も散見される。内視鏡的切除に関しては内視鏡吸引下にスネアリングを行う方法や,十二指腸壁や十二指腸乳頭部の損傷を防ぐために2チャネルスコープを用いて憩室を把持しながら切除する方法が報告されている。内視鏡的切除術は外科的切除術に比べて低侵襲であるが,十二指腸乳頭部の損傷や切除断端からの出血などの合併症に対する注意が必要である2)。
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