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疾患の概要
一般的に小腸癌とは十二指腸,空腸,回腸のいずれかを原発とする腺癌を指す。十二指腸癌を除き空腸癌と回腸癌は本邦の取扱い規約やガイドラインが存在しないため,病期分類はUICC-TNM分類に準じて行われる。「十二指腸進行癌」の別項があるため,本稿では空腸癌と回腸癌を扱い,固有筋層以深の深達度を進行癌と定義する。小腸癌は全消化管癌の3%未満と比較的稀な癌で,男女比は2.6:2.0と男性にやや多く,診断時の年齢中央値は66歳である。近年は年間1.8%のペースで増加しており,臨床的な意義はより重要なものとなってきている1)。特異的な症状が存在せず,カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)やバルーンアシスト内視鏡(balloon assisted enteroscopy:BAE)などの小腸検査は限られた医療機関でしか行えないため,早期発見はきわめて困難であり,大多数は進行癌で発見される。小腸癌のうち過半数が十二指腸で発生し,残りは空腸(18~29%),回腸(10~13%)に発生する。小腸癌のリスクファクターとしてアルコール摂取と喫煙があげられており,その他に動物性脂肪や動物性蛋白質の高摂取がリスクファクターの可能性があるとして報告されている2)。また,Crohn病,セリアック病,家族性大腸腺腫症,Peutz-Jeghers症候群,リンチ症候群などいくつかの素因と関連することが証明されている。確立された標準的治療法はなく,手術適応や化学療法のレジメンは大腸癌の治療法に準じているのが現状であるが,両者は異なるゲノムプロファイルを有しており,小腸癌の特徴にもとづいた治療法の確立が必要である3)。近年では免疫チェックポイント阻害薬が固形癌の薬物療法に対し革命的な変化をもたらしつつある。本邦では小腸癌に対してはマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability:MSI)検査が保険収載されており,MSI-Highであればペムブロリズマブが適応となる。筆者らは小腸癌では一定の割合でMSI-High腫瘍が含まれていることを報告しており,免疫チェックポイント阻害薬に対する臨床的効果を含め,今後のデータの蓄積が望まれる4)。
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