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はじめに
Helicobacter pylori除菌療法の普及とともに胃潰瘍の頻度は大きく低下しており,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)や抗癌薬などの薬剤性胃潰瘍の頻度が増加している。一方で,以前より大きな横隔膜ヘルニアを有する患者では鉄欠乏性貧血をきたしやすいことが知られており,関連する要因についての検討が行われている1)。本疾患は,大きな横隔膜ヘルニアを有する高齢患者で,かつ慢性貧血を有する患者に有意に多く認められ,内視鏡検査では比較的大きなヘルニアを有する患者の横隔膜通過部あるいはその近傍の粘膜襞上に認められる直線状のびらんとして報告された2)。その後,びらんだけでなく,潰瘍性病変も含め,報告者の名前を冠してCameron ulcer(Cameron lesion)とも表現される。顕性あるいは不顕性の消化管出血を伴うことがあり,大きなヘルニアの存在とNSAIDsの服用が発症のリスク因子としてあげられている3)。本病態の機序として,大きな横隔膜ヘルニアに関連した呼吸性移動に伴う外傷や循環障害による粘膜障害4),胃食道逆流防止機構として働くgastroesophageal flap valve(GEFV)の関与が報告5)されている。胃内圧の変化や粘膜の循環障害を基礎に,胃酸やNSAIDsによる粘膜障害など多様な病態の関与が推定されており,報告例ごとにその背景は異なるものと推測される。治療として,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)などの酸分泌抑制薬の投与や顕性出血をきたした症例では内視鏡治療が行われるが,内視鏡止血が困難な症例では胃潰瘍に対する外科的治療や再出血予防のための横隔膜ヘルニアに対する手術も選択肢となる。
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