Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
疾患の概要
一般的に,びらんは組織学的に粘膜筋板までの粘膜欠損のことを指し,粘膜筋板を越える粘膜欠損は潰瘍と定義される。ただし,内視鏡的にこれらを正確に判断することが難しいため,大きさで定義されることが多い。NSAIDs潰瘍の予防試験を対象としたシステマティックレビューでは,内視鏡的に3mm以上の大きさの粘膜欠損を潰瘍と定義された論文がもっとも多く,次は5mm以上の大きさの粘膜欠損を潰瘍と定義しているため,内視鏡的には粘膜欠損の大きさが3〜5mm以下をびらん,それ以上を潰瘍とするのが一般的である1)。胃びらんは,原則として陥凹性病変に分類されるが,隆起を伴い前庭部多発するものは一般的に「たこいぼびらん」と呼ばれ,「疣状胃炎」はほぼ同義である。これは,Helicobacter pylori(H.pylori)未感染または既感染の前庭部に多く認められ,updated Sydney systemの胃炎分類にも記載がある2)。前庭部のびらんは胃酸の影響,蠕動運動,胆汁の逆流,アルコールなどの食習慣によると推定されているが,H.pyloriの関与は少ないと考えられる。一方で,胃体部に認めるびらんはH.pylori感染の有無で出現の頻度は変わらず,前庭部の隆起性びらんより頻度が高くないと報告されている3)。しかし,近年はNSAIDs内服者や抗血栓薬内服者が増加しており,びらんを認める症例も多くみられる。また,びらんのなかには早期胃癌との鑑別が難しいものもあるため,単発であるもの,辺縁が不整なもの,出血を伴うものなどは,一度NBI(Narrow Band Imaging)などの画像強調内視鏡(image enhanced endoscopy:IEE)を含めた拡大観察を行うとより診断が確実にできる。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.