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はじめに
内視鏡的乳頭切除術(EP)の適応として,「内視鏡的乳頭切除術(endoscopic papillectomy:EP)診療ガイドライン」1)(以下,EP診療ガイドライン)では,十二指腸乳頭部腺腫に行うことが提案されている。推奨されるほどのエビデンスがないのが現状であるが,胆管・膵管への管腔内進展を伴わない乳頭部腺腫にEPを施行することはコンセンサスが得られていると考えられる。一方乳頭部癌に対しては,近年Oddi括約筋に浸潤のない腺腫内癌などに対するEPの有用性についての報告が認められるようになった2, 3),Oddi括約筋への浸潤の有無を生検組織の免疫染色などで診断する試みもなされているが4, 5),確立されたものではない。これらの理由から,乳頭部癌に対するEPはコンセンサスが得られているとはいえない状況である。この適応を考慮すると,EP前の進展度診断の主たる目的は乳頭部癌の深達度診断ではなく,乳頭部腺腫の胆管・膵管への管腔内進展を診断することになる。EP診療ガイドラインでは,EUSの胆管・膵管への進展度診断能はそれぞれ86~90%・77~92%,管腔内超音波検査(intraductal ultrasound:IDUS)の胆管・膵管への進展度診断能はそれぞれ90~95%・88~100%と高い精度を示しているとしているが,この数字は,乳頭部癌症例で明らかに管腔内進展をしている症例も含めた成績であることに注意が必要である。実際にEUSやIDUSでの管腔内進展度は,胆管・膵管のOddi括約筋の及ばない上流側のみで診断可能であり,Oddi括約筋の及ぶ深さまでしか切除できないEPの切除標本で,病理組織学的に詳細に管腔内進展の有無を証明することは不可能である。また遺残病変の有無での評価も,切除の深さや追加焼灼などの影響を受けるために困難であるという現状からゴールドスタンダードの設定が困難であり,EPの適応となる症例においてEUSやIDUSの管腔内進展度診断能を評価することは困難であると個人的には考えている。
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