特集 遺伝的素因による血栓症
6.非典型溶血性尿毒症症候群と補体系因子遺伝子変異
藤村吉博
1
Yoshihiro Fujimura
1
1奈良県立医科大学 名誉教授・特任教授/奈良県赤十字血液センター 所長
pp.59-71
発行日 2014年12月30日
Published Date 2014/12/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201501059
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血栓性微小血管症(TMA)は細血管性溶血性貧血,血小板減少,血栓による臓器機能障害を特徴とする病理学的診断名で,この中には血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)が含まれる。TTPは2001年にvon Willebrand因子特異的切断酵素であるADAMTS13が同定され,同酵素活性著減で診断される。一方,HUSの約90%は志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の感染を契機に発症する典型的HUSである。しかし,残りの約10%はSTEC感染とは無関係に発症し,非典型HUS(aHUS)と呼ばれている。 1998年,英国のGoodshipらはaHUS患者のDNA多点連鎖解析にて,complement factor H(CFH)の遺伝子異常と疾患関連性を示すブレークスルーをなし得た。以後,補体や補体関連因子に注目が集まり,C3,CFB,CFI,また膜糖蛋白MCPの遺伝子異常にてaHUSが生じ,さらにthrombomodulin,plasminogen,diacylgycerol kinase eなど,凝固,線溶,血小板の活性化制御因子の遺伝子異常もaHUSの原因となることが示された。前者はcomplement-mediated TMA,後者はcoagulation-mediated TMAと新分類されているが,ここではともにaHUSとして最近の知見を解説する。