特集 白血病幹細胞
5.小児白血病の髄外病態形成機構の解明
中畑龍俊
1
,
丹羽明
2
Tatsutoshi Nakahata
1
,
Akira Niwa
2
1京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授
2京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門
pp.1771-1776
発行日 2014年11月30日
Published Date 2014/11/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201412057
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小児白血病では成人と異なり,急性リンパ性白血病(ALL)の頻度が最も高い。小児ALLの治療成績は大幅に向上しているものの,再発例や難治例がなお存在する。特に骨髄外の白血病細胞が再発に大きく寄与していることはよく知られており,そうした髄外微小環境における白血病細胞の増殖支持システムについての解明が必要と考えられる。最近,小児B前駆細胞性ALL患者由来の白血病細胞を免疫不全マウス(NOGマウス)に移植し,髄外浸潤を含めたヒト白血病の病態を忠実に再現するマウスモデルが開発された。髄外浸潤臓器の1つである肝臓の微小環境に関する解析がこのマウスモデルを用いて行われ,SDF1/CXCR4 axisが白血病細胞の髄外における増殖および生存を支持していることが明らかになった。抗癌剤投与後にCXCR4 antagonist(AMD3100)を投与すると,有意に全身性再発を抑制し,マウスの生命予後を改善することが見いだされ,白血病髄外微小環境への新たな治療戦略の可能性が示された。