今月の表紙
髄外造血
巽 典之
1
,
鎌田 貴子
1
1大阪市立大学医学部臨床検査医学
pp.141
発行日 1997年2月1日
Published Date 1997/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902987
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昨夏,恒例の東南アジア地区への調査研究に出かけた.調査隊での話題は「バナナに種がある?」かどうかであった.もちろん私は種がないほうに賭けた.あるほうに賭けた連中は大変な努力をした後,ニコニコしながら小振りの2種のバナナをぶら下げて帰ってきた.食べてみるとうまくもない果肉に種がぎっしり.2つのバナナの種は色と形がずいぶんと違っていたのもまた不思議.
さて,今回はいささかどぎつい写真とおしかりを受けそうだが,わが国ではほとんど見ることのできない“髄外造血の典型例”であって,タイ国でのサラセミア症患者から集めた貴重な症例ばかりである.図aは男児の巨大肝脾腫であり,肝臓と脾臓での造血が亢進した結果である.図bは下方から出ている手が重症貧血のもので,うっ血・心不全・頻回輸血の結果,太鼓のバチ状変形と皮膚の色素沈着をきたしたものであり,上方から突き出ている正常対照と比較するとその状況がよく把握できる.図cはαサラセミアhydrops faetalis新生児の解剖像であり,うっ血変色した腸管上に結節状に腸管造血巣が観察される.図dは同じ新生児の頭蓋骨X線像であり,頭頂部に毛が立ったような骨変化が観察できる.異常造血により,骨形成障害が生じた結果である.
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