特集 免疫制御によるがん治療
7.多発性骨髄腫に向けた人工アジュバントベクター細胞免疫治療の開発
藤井眞一郎
1
Shin-ichiro Fujii
1
1理化学研究所 統合生命医科学研究所 免疫細胞治療研究チーム チームリーダー
pp.1647-1654
発行日 2014年10月30日
Published Date 2014/10/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201411071
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がん細胞はその多様性の面から,HLAを発現しているものと欠損しているものがある。このような腫瘍細胞自身の多様性とHLAクラス I 分子の欠損が,がんワクチン療法を不十分にしている一因である。一方で,生体防御を担う免疫系には,抗原非特異的に初期防御を担う「自然免疫」と,細胞性免疫によって特定の抗原を認識し強力に排除する「獲得免疫」がある。自然免疫系はHLAを欠損しているがん細胞により効果的であるのに対し,獲得免疫系,特にキラーT細胞はHLAを発現したがん細胞に対し有効である。がん細胞を免疫回避させないためには,いかにして自然免疫と獲得免疫の両者を誘導するかが鍵である。我々は,この両者を誘導し得る細胞ワクチンシステムとして,“人工アジュバントベクター細胞”を考案し,開発研究を進めている。本稿ではこの新規がんワクチンを紹介し,多発性骨髄腫を対象とした治療法開発について概説する。