特集 フォンウィルブランド病 ~分子基盤から臨床まで~
序 ~出血と血栓の両面貨幣機能を持つVWFの研究歴史~
藤村吉博
1
Yoshihiro Fujimura
1
1奈良県立医科大学 名誉教授/特任教授
pp.1143-1148
発行日 2014年7月30日
Published Date 2014/7/30
DOI https://doi.org/10.20837/52014081143
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
von Willebrand病(VWD)は,1926年にErik Adorf von Willebrandによって,北欧のÅland諸島で血族結婚を繰り返す家系に見られる先天性出血素因として最初に報告され,血小板数正常,出血時間延長,常染色体優性遺伝,そして後に凝固第 VIII 因子活性低下を伴うなどの特徴が示された。 1985年以降,von Willebrand因子(VWF)の特異的な多重体構造が明らかにされ,VWDはVWFの量的・質的異常に基づく疾患であること,また,VWF多重体のサイズ減少は「出血」の原因となり,逆に超高分子多重体の蓄積では機能が強くなり「血栓」を起こすことが示された。すなわち,VWFは両面貨幣(two-sided coins)機能を持つ血漿蛋白で,この機能調節をしているのがVWF切断酵素,ADAMTS13である。VWDに端を発した「出血~止血研究」は,今「血栓治療研究」にも大きな道を開きつつある。