トピックス
vWF切断酵素
金子 誠
1
1東京大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科
pp.161-164
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100352
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はじめに
これまで不明とされていた血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura,TTP)の発症機序が,最近,明らかになってきた.その発症原因として大きな関与が指摘されていたvon Willebrand因子(vWF)切断酵素が,2001年に単離・同定された.この酵素は,ADAMTSファミリー(a disintegrin-like domain, and metalloprotease, with thrombospondin type 1 motif)に属する亜鉛型メタロプロテアーゼとしてADAMTS13と命名された1~4).ADAMTS13はvWFのA2ドメインに存在するTyr842-Met843間のペプチド結合を特異的に切断するが,なんらかの原因によりADAMTS13の欠損,機能不全が惹き起こされると,vWFが切断されなくなり,超高分子量vWFマルチマー〔ultra-large(or “unusually large”)vWF,ULvWF〕が出現する.ADAMTS13の制御が破綻し,血漿中にULvWFが出現したことによる血小板血栓形成の過剰促進が,TTPの発症要因と考えられている.現在のところ,ADAMTS13活性のみでは,この病態を完全に説明できない症例も多々存在しうるが,ADAMTS13活性測定およびそのインヒビター測定をすることが,診断はもとより治療効果予測にも有用である5).
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