別冊秋号 —麻酔科医なら知っておきたい—血栓症・塞栓症
PART2 血栓総論
5 なぜ血栓ができるのか—血小板と凝固因子の両面性
朝倉 英策
1
1金沢大学附属病院 高密度無菌治療部
pp.33-39
発行日 2021年9月17日
Published Date 2021/9/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200221
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止血と血栓
血液は,正常な場合には凝固せずに循環し(図1左上),血管外では凝固して止血(hemostasis)する(図1右上)。この当然と思っている現象が時に破綻する。すなわち,血管内であるにもかかわらず凝固したり(血栓thrombosis,図1左下),血管外に出ても凝固しない(異常出血,図1右下)ことがある1)。
止血は重要な生理機序であり,これがないとヒトは瞬時も生存できない。一方,血栓症や塞栓症は病的状態であり,脳梗塞,心筋梗塞,肺塞栓に代表されるように,最悪の場合は命をも奪う怖い病態である。しかし,興味深いことに,止血という生理機序と血栓という病態には同じ役者が登場する。すなわち,血管を反応の場として「血小板」と「凝固因子」が協力して止血し,同じく血小板と凝固因子が協力して血栓症も発症させる。つまり,血小板と凝固因子は適度に働けば善玉,過度に働けば悪玉なのだ。
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