増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
1.血液検査
4 vWF切断酵素(ADAMTS13)
矢冨 裕
1
1東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学
pp.1096-1098
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101058
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はじめに
血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura,TTP)は,血小板減少を引き起こす基礎疾患として極めて重要である.長らく,本疾患の原因は不明であり,類縁疾患である溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,HUS)との鑑別も困難な場合が多かった.しかし,ADAMTSファミリーに属する亜鉛型メタロプロテアーゼであるADAMTS13(a disintegrin-like domain, and metalloprotease, with thrombospondin type 1 motif13)がvWF切断酵素として2001年に単離・同定されたことにより,大きな進展が認められた.この酵素はvWFのA2ドメインに存在するTyr842-Met843間のペプチド結合を特異的に切断する.なんらかの原因によりADAMTS13の欠損,機能不全が惹き起こされるとvWFが切断されなくなり,血小板凝集活性の強い超高分子量vWFマルチマー(unusually large vWF,ULvWF)が血漿中に出現することになる.これによる血小板血栓形成の過剰促進が,TTPの発症要因と理解されるようになった.そして,この事実から推察できるように,血漿ADAMTS13の測定はTTP診断に極めて有用であることが示されている.
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