特集 慢性骨髄性白血病(CML)治療 ~残された課題~
4.T315I克服に向けて
田内哲三
1
Tetsuzo Tauchi
1
1東京医科大学 血液内科 准教授
pp.201-207
発行日 2013年1月30日
Published Date 2013/1/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201302201
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第三世代ABLキナーゼ阻害剤であるponatinibはABL-T315Iへの結合が可能であり,carbon-carbon triple bound linkage様式がT315I BCR-ABL変異体におけるATP結合部位へのアクセスを可能にしている。T315I変異を含むすべてのBCR-ABL変異体に有効であるが,IC50は野生型BCR-ABLと比べてT315I変異の方が10倍近く高い。米国内5施設にてCML 65症例がponatinib第 I 相試験に参加した。43症例がCML-CP,9症例がCML-AP,8症例がCML-BC,5症例がPh ALLであり,35症例が治療継続している。Ponatinibの血中半減期は22時間であり,30 mg/日以上の内服にてトラフレベルは40 nMに達することより,T315I変異に対しても有効性が示される。CML-CP期43症例に対する有効性は血液学的寛解(HR)で98%,細胞遺伝学的完全寛解(CCR)は63%,分子学的大寛解(MMR)は44%であり,細胞遺伝学的大寛解に至るまでの平均期間が12週であった第 I 相臨床試験の結果から,推奨用量は45 mg/日とされ,国際臨床試験の用量となった。PonatinibによるPh ALLに対する効果は限定的であり,他の薬剤との併用療法の確立が必要である。