技術講座 生化学
T3,T4
喜多村 道男
1
1三井記念病院放射線科
pp.909-912
発行日 1977年12月1日
Published Date 1977/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201515
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
甲状腺ホルモンは基本的にはthyronineのヨード誘導体である.この分子にヨードが付く位置と数により,物理化学的,生物学的性質が異なってくる1)(図1).thyroxine(T4)はしばしば3,5,3′,5′-tetraiodothyronineで示され,l-triiodothyronine(T3)は3,5,3′の位置にヨードが結合している(reverse T3と呼ばれる3,3′,5′-T3も見いだされている).これらのホルモンは甲状腺において生合成されるが,その過程は,(1)細胞外液からヨードの甲状腺へのtransport及び濃縮 (2)ヨードの酸化(2I→I2) (3)ヨードの有機化(3-monoiodotyrosine,MIT及び3,5-diiodotyrosinc,DITの生成) (4)縮合(MIT+DIT→T3,2DIT→T4)である.
生成されたT4,T3は,TSHの作用で循環血液中に分泌され,大部分はthyroxine binding globulin(TBG)に結合する.残りは遊離状態(FT4,FT3)で血中を循環している.組織中でホルモン作用に寄与するものはこの遊離型(FT4,FT3)であり,結合型はその供給源であると考えられている.しかしながらFT3の血中半減時間は,FT4のそれの6倍も早いにもかかわらず生物学的活性はFT4の4〜5倍も大きい.このことからFT3の生理学的意義の大きさが再認識され,T4はT3のprecurserであり,ホルモン作用を有しないprohormoneではなかろうかという説も出ている1,2).
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.