特集 アトピー性皮膚炎の病態に基づいた新たなアプローチ
Ⅷ.痒み感覚の異常とその対策
室田浩之
1
Hiroyuki Murota
1
1大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座皮膚科学教室准教授
pp.226-232
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201602064
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痒みとは何なのか,未だに独立した“感覚様式”か,または本質的には痛みなのかの結論は出ていない。最近では痛覚のコントラストが痒みであるという“Spatial contrast theory”も再浮上してきた。 最近の基礎研究の成果から痒みの誘発経路の理解が深まっている。痒み感覚が掻きたい情動を引き起こす経路として皮膚の乾燥や炎症に起因する痒みがある。病変部からサイトカインや化学伝達物質など痒みを引き起こす様々な物質(起痒物質)が放出され,神経に作用することで痒みを誘発し,掻きたい情動を引き起こす。強い掻破は皮膚炎の悪化と痒みの増強を導く。アトピー性皮膚炎などの慢性炎症では皮膚の感覚過敏が生じており,痒み感覚が生じやすい。掻きたい情動が痒み感覚を誘発する経路の存在は中枢神経における痒み感覚のプロセシングのメカニズムの理解によって明らかにされつつある。本稿では痒みのメカニズムと対処法について最新の知見をもとに概説したい。