連載 エイズに見られる感染症と悪性腫瘍(14)
進行性多巣性白質脳症
上平朝子
1
Uehira Tomoko
1
1国立病院機構大阪医療センター感染症内科
pp.4-11
発行日 2014年11月25日
Published Date 2014/11/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201412004
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進行性多巣性白質脳症(PML)は,ポリオーマウイルス属のJCウイルス(JCV)により引き起こされる多巣性の脱髄病変を呈する中枢神経系の脱随疾患である。JCウイルスは無症候にヒトに感染し,通常は増殖することのない細胞性免疫が低下するような疾患や病態の患者では,ウイルスが再活性化,増殖し,血行性に脳に伝播する。HIV感染者,臓器移植,血液造血器腫瘍,多発性硬化症,自己免疫疾患の患者などにPMLの発症するリスクがある。頭部MRIでは大脳白質病変が主体であり,多発する大小の脱随巣が融合し,拡大する。HIV感染者では免疫不全が進行した病態で発症し,AIDS指標疾患のひとつである。確立した治療法はなく,抗HIV療法(ART)が唯一の治療である。ARTにより生命予後は改善したが,重篤な後遺症を認めることも多く,神経学的予後は不良である。