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特集 慢性進行性神経疾患・1
ウイルス
進行性多巣性白質脳症のウイルス学
Virology of progrcssive multifocal leucoencephalopathy
天児 和暢
1
Kazunobu AMAKO
1
1九州大学医学部細菌学教室
1Department of Bacteriology, School of Medicine, Kyushu University
pp.822-828
発行日 1972年10月10日
Published Date 1972/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903432
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1.まえがき
進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leucoencephalopathy,以下PMLと略記)は1958年にAstromら7)により初めて独立した疾患として記載された進行性に経過する脱髄性脳疾患で白血病,ホジキン氏病などの慢性疾患の経過中に発症することが多い。これはきわめてまれな疾患で現在まで80例たらずの報告があるにすぎない31)。この病気の本態に関してはCavanaghら11),Richardson34)によりウイルス感染の可能性が示唆されていたが,1964年にZuRhein & Chou41)およびSilverman & Rubingtein36)により脳組織中にPapovavirus様のウイルス粒子の存在が電子顕微鏡下に証明され,PMLはウイルス感染によって起こるものであることが明らかになった。
これまでウイルス感染症はいずれも急性の経過をたどるものと考えられていたのに反し,PMLはその経過が長く,麻疹ウイルスによって起こるとされている亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とともに亜急性もしくは慢性のウイルス感染症という概念で考えなければならないものであり,Kuru,ScrapieなどのいわゆるSlow Virus感染症とともに新しいウイルス感染症の一つとしてウイルス研究者の注目を集めている24,25)。
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