第 III 部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~
心不全治療薬
永野伸卓
1
,
三浦哲嗣
2
1札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座
2札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座 教授
pp.488-494
発行日 2015年1月31日
Published Date 2015/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201513488
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血管拡張作用や心筋保護効果を有するナトリウム(Na)利尿ペプチドや,ブラジキニン(bradykinin)の分解酵素であるネプリライシン(neprilysin)を阻害する薬剤は,高血圧や心不全の治療薬としての可能性が以前より注目されており,アンジオテンシン変換酵素(ACE)と同時にネプリライシンを阻害する薬剤であるomapatrilatには,ACE阻害薬に対する優越性が期待された。しかしomapatrilatは血管性浮腫の発現頻度が高く,実地臨床への導入に至らなかった。そうした有害事象を回避できる薬剤として,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)とネプリライシン阻害薬の合剤であるLCZ696が開発され,臨床試験が進められている。最近の大規模臨床試験の結果からは,LCZ696が十分な降圧効果に加え,ACE阻害薬に比べて有意に心不全の予後を改善することが示され,今後ACE阻害薬に代わる新たな心不全治療の第一選択薬となる可能性がある。