第III部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~
心不全治療薬
吉川勉
1
1榊原記念病院・副院長/同 循環器内科/榊原記念クリニック・院長
pp.426-431
発行日 2016年1月31日
Published Date 2016/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201613426
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心不全領域でいま最も注目を浴びているのは,ネプリライシン阻害薬である。LCZ696は,アンジオテンシンII受容体拮抗薬バルサルタンとネプリライシン阻害薬との合剤である。収縮不全を背景とする慢性心不全患者を対象とした臨床試験(PARADIGM-HF〔Prospective Comparison of ARNI with ACE I to Determine Impact on Global Mortality and Morbidity in Heart Failure〕試験)で,一次エンドポイントである心血管死,あるいは心不全による入院を20%減少した。現在,海外で承認申請中である。 Serelaxinは胎盤から産生される血管作動物質であり,血管平滑筋弛緩作用を有する。急性心不全を対象とした臨床試験(RELAX-AHF〔Relaxin in Acute Heart Failure〕試験)で,呼吸困難などの臨床症状を改善したが,いまだ承認には至っていない。 Ivabradineは心房筋Ifチャネル遮断薬で,心機能を抑制することなく心拍数を低下させる作用を有する。既に海外での大規模臨床試験で有効性が明らかとなり,海外では心不全治療薬として承認されている。本邦では,臨床試験はこれからである。非ステロイド系アルドステロン受容体拮抗薬,収縮蛋白ミオシン活性化薬などが開発途上にある。さらに拡張不全による心不全に対する治療薬の開発も待たれる。