特集 バイオシミラーの現状と今後の展望
9.バイオシミラーの医療経済
齋藤翔太
1
1新潟医療福祉大学医療経営管理学部医療情報管理学科
pp.811-814
発行日 2019年3月1日
Published Date 2019/3/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201903811
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炎症性腸疾患の治療において複数の生物学的製剤が使用できるようになり,その治療戦略は激変した。早期の寛解導入と長期間の寛解維持が可能となり,患者のQOL(quality of life)も目覚ましく向上した。民間レセプトデータベースの解析から明らかになった,炎症性腸疾患領域における生物学的製剤が及ぼす医療経済負担を報告する。推計された1人当たりの年間医療費の中央値は,クローン病では1,957,320円,潰瘍性大腸炎では278,760円であった。また,抗TNF(腫瘍壊死因子)-α抗体製剤の使用率はクローン病では55.2%(776人/1,405人),潰瘍性大腸炎では7.5%(433人/5,771人)であった。クローン病に対して生物学的製剤の治療が積極的に行われており,3年間の外来レセプト請求額のうち抗TNF-α抗体製剤の薬剤費がおよそ8割の金額を占めていた。今後は先行品を安価なバイオシミラーへ置き換えることで,医療費を抑制できる見込みの高いことが示唆された。