特集 遺伝子治療における技術革新の現状と課題
2.原発性免疫不全症の遺伝子治療
小野寺雅史
1
1国立研究開発法人 国立成育医療研究センター研究所 成育遺伝研究部・部長
pp.59-66
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201801059
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ここ十余年来の造血幹細胞遺伝子治療のあゆみは,本治療が原発性免疫不全症を含む数多くの遺伝性疾患に対し有効な治療法であることを証明してきた。ただ,そこで得られた結果は必ずしも同等ではなく,それは,今後,遺伝子治療が疾患の特性に合わせ微細な調整を必要としていることを意味している。また,ガンマレトロウイルスベクターによる遺伝子導入細胞のがん化の問題は,使用するベクターをレンチウイルスベクターに取って代わらせ,さらにはゲノム編集技術の向上と相まって,今後の遺伝子治療は変異遺伝子そのものを修復する治療法へと,その流れを変えていくものと思われる。しかし,現行の遺伝子治療がこれまでの臨床試験における苦い経験により形成されたことを考えると,今後も弛みなく遺伝子治療を継続していくことが肝要であると考える。