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排尿障害治療の原則は,排尿筋収縮力の増強,尿道抵抗の減弱,の2点である。前者にはムスカリン受容体活性薬やコリンエステラーゼ阻害薬が含まれ,後者には交感神経系α1受容体遮断薬,前立腺肥大症のみを適応とする男性ホルモン5α還元酵素阻害薬,Phosphodiesterase type5 inhibitor(PDE5阻害薬)が含まれる。PDE5阻害薬タダラフィル(シアリス®)は勃起障害治療薬としての適用であったが,2014年4月にわが国で「前立腺肥大症に伴う下部尿路症状」に対して保険適用となった。その後,韓国で開発されたPDE5阻害薬ウデナフィルが,「前立腺肥大症に伴う下部尿路症状」を目的として臨床開発段階にある。α1遮断薬で治療中の前立腺肥大症に伴う排尿障害を有する日本人患者を対象とし,タダラフィルを加えた併用治療の安全性と有効性について検討するための市販後調査が進行中である。 蓄尿障害治療の原則は,排尿筋過活動の抑制,排尿筋弛緩機構の増強,尿道抵抗の増強,の3点である。前2者は,過活動膀胱や排尿筋過活動に対する治療法であり,第一選択は抗コリン薬である。2011年には世界で初めて交感神経系β3受容体活性薬(ミラベグロン;ベタニス®)がわが国で認可され,その後世界30カ国以上で認可された。さらに交感神経系β3受容体活性薬ビベグロンが,「過活動膀胱」を対象として臨床開発段階にある。抗コリン薬などの従来治療法に抵抗性の「神経因性過活動膀胱」および「難治性特発性過活動膀胱」に対して,A型ボツリヌス毒素の膀胱排尿筋内注射法が,2011年に米国で保険適用となり,欧州でも承認されているが,わが国でも臨床開発が開始される予定である。デスモプレシン口腔内崩壊錠は小児の「夜尿症」に対して承認されているが,「夜間頻尿」に関しては臨床試験段階である。