特集 薬剤誘発性認知症
8.泌尿器病薬によって誘発される認知症・認知障害
榊原隆次
1
1東邦大学医療センター佐倉病院内科学神経内科・教授
pp.2505-2509
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201611107
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過活動膀胱(OAB)は,高齢者の生活の質を害する重要な一因であるが,適切な治療により改善するため,積極的な加療が望まれる。高齢者でOABをきたす疾患として,白質型多発性脳梗塞,レビー小体型認知症,正常圧水頭症があり,それらより頻度は少ないものの,アルツハイマー病患者にも見られる。OAB治療薬の主流は,抗コリン(ムスカリン)薬である。万一,OAB治療薬が血液脳関門(BBB)を通過すると,中枢のムスカリン受容体と結合し,認知機能に影響を及ぼす可能性がある。このため治療に際しては,BBBを通過しにくい抗コリン薬を,譫妄等の発生に注意しながら投与すると良いとされる。認知症患者でコリンエステラーゼ阻害薬を投与中の場合も,抗コリン薬との併用がある程度可能と思われた。しかし治療中は,患者を注意深く観察する必要がある。