特集2 眼疾患におけるROCK阻害薬の可能性
6.ROCK阻害薬と角膜内皮治療
小泉範子
1
1同志社大学生命医科学部医工学科・教授
pp.1515-1523
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.20837/12016061515
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角膜内皮細胞が手術による侵襲や疾患によって障害されると,角膜の浮腫と混濁による重症の視力障害を生じる。我々は再生医学的アプローチを用いた新しい角膜内皮治療法の開発を行っており,2009年にRhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)が角膜内皮細胞の細胞接着と増殖を促進することを報告した。そしてROCK阻害薬が角膜内皮細胞の基質接着性を促進することを利用して,2013年に京都府立医科大学においてROCK阻害薬を用いた細胞注入治療の臨床研究を開始した。また,ROCK阻害薬がヒト角膜内皮細胞に対する増殖促進作用を有することに着目し,フックス角膜内皮ジストロフィや白内障手術などによる角膜内皮障害に対するROCK阻害薬による点眼治療の開発を行っている。本稿ではROCK阻害薬を用いた新しい角膜内皮治療の開発について紹介する。