- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
近年緑内障治療薬として臨床応用されたROCK阻害薬は,眼圧下降機序として主経路をターゲットとしている点で,既存の緑内障点眼薬と大きく異なっている(図1)。ROCKはRho-associated kinaseの略称で,低分子量G蛋白質Rhoの下流分子として広範に発現しており,前房水中のさまざまな生理活性因子によってその機能が活性化されることが知られている。Rho-ROCKシグナルは細胞の接着・遊走・増殖・分化・アポトーシスなど幅広い細胞機能の制御に関わっており,ROCK阻害薬は,線維柱帯やSchlemm(シュレム)管における収縮性・線維化・透過性・細胞外基質の産生や沈着を制御し,房水の主経路に直接影響し眼圧を下げることが報告されている1)~6)。現在,実臨床で用いられているリパスジル点眼は,世界初の選択的ROCK阻害効果を有する緑内障点眼薬として2014年12月にわが国で認可された。そのほかのROCK阻害薬も新規の眼圧降下剤として臨床研究が行われている途中である7)~9)。リパスジルは,既存の他の機序で眼圧下降をもたらす点眼(プロスタグランジン製剤やβブロッカーなど)との併用においても,その安全性や眼圧下降作用が証明されている10)~14)。加えて,ROCK阻害薬の持つ細胞外基質のリモデリング作用により,リパスジルの長期使用によって,特に眼圧の高い症例において眼圧下降作用が発揮される可能性が報告された。ROCK阻害薬は,網膜血液循環や神経保護作用,創傷治癒のコントロールにも関与が示唆されており,これらの多様な作用が今後緑内障治療において有用であることが期待される。本稿ではそのような面からもROCK阻害薬の作用を考察したい。
Copyright © 2018, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.